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キエセ・レイモン 著 山田文 訳/里山社 /四六判 並製/336ページ
黒人母子の内省が暴くアメリカの“噓”
「どうか怒らないでほしい、母さん。
ぼくはただ、ぼくが何を経験してどこで歪んだのか、
母さんに伝えようとしているだけなんだ。
ぼくらが何を経験してどこで歪んだのか、
ぼくらに知らせようとしているだけなんだ。」(本書より)
「家族とは、黒人たちの歴史的命題であり続けてきたといってよい。一切のロマンスを排したそれとの対決が、本書を稀有な「黒人の自伝」としているのである。特にその中心には母がおり、彼女の生き方こそ、人種主義社会の非情さと、善悪では裁けないサヴァイヴァルの複雑な機微の集積である。」新田啓子(解説より)
「信じられない。『ヘヴィ』にはびっくり。深い。強烈。多層的。ただただすごい。」―ロクサーヌ・ゲイ(作家)
ニューヨークタイムズ2018年ベスト本/2019年アンドリューカーネギー賞/2018年クリストファー・イシャーウッド賞自伝的散文賞
あらすじ:
黒人女性政治学者として輝かしいキャリアを築く一方で、私生活では母子家庭で息子を一人で育てる不安でいっぱいだった母。アメリカ社会で黒人が意味のある人生をまっとうする難しさを知る母は、息子に鞭打ちの折檻も交えて厳しく教育しながら、権威主義的な恋人とギャンブルに依存し、家庭は常に貧困状態にある。「たった一人の友だち」と慕う母から受ける虐待や友人間の性暴力に傷つく「ぼく」は、ジャンクフードに逃避し、増えた体重が彼を一層痛めつける。そんな「ぼく」が痛みから抜け出すべく手繰り寄せたのは、他ならぬ母から教えられた「書いて、推敲する」ことだった。
キエセ・レイモン (著)
1974年生まれ。作家、ミシシッピ大学英文学部ヒューバート・H・マカレグザンダー記念教授。いわゆる「ディープ・サウス」のミシシッピ州ジャクソンで生まれ育つ。ミルサップス大学、ジャクソン州立大学を経て、オーバリン大学を卒業。インディアナ大学大学院文芸創作修士課程(MFA)修了。著書に長篇小説Long Division(2013年。2021年に再版され、ウィリアム・サローヤン国際賞を受賞)、エッセイ集How to Slowly Kill Yourself and Others in America(2013年)がある。数多くの主要メディアにもエッセイ、短篇小説、書評などを寄稿。本書は2019年アンドリュー・カーネギー賞ノンフィクション部門、2018年クリストファー・イシャーウッド自伝的散文賞などの賞を受けた。ニューヨーク・タイムズ紙などで2018年のベスト本の一冊にも選ばれている。2020年、ミシシッピで子や孫のために懸命に働いた祖母の名に因み、ミシシッピの子どもとその親がよりよく読み、書き、推敲し、経験を共有できるようにすることを目的としたプログラム〈キャサリン・コールマン文芸・正義イニシアティヴ〉(The Catherine Coleman Literary Arts and Justice Initiative)を創設した。HP:https://www.kieselaymon.com
山田 文 (ヤマダ フミ) (訳)
翻訳者。訳書にヴィエト・タン・ウェン(編)『ザ・ディスプレイスト―難民作家18人の自分と家族の物語』(ポプラ社)、ダレン・マクガーヴェイ『ポバティー・サファリ―イギリス最下層の怒り』(集英社)、J.D.ヴァンス『ヒルビリー・エレジー―アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(共訳、光文社)などがある。