被災物 モノ語りは増殖する

4646

被災物 モノ語りは増殖する  (4646)

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かたばみ書房/四六判 並製/256ページ

 

気仙沼のリアス・アーク美術館には、東日本大震災の「被災物」が展示されている。
2019年、この展示に出会った姜信子は、「被災物」に応答すべく、
大阪で「被災物」をモノ語るワークショップを始めた。
傷ついたモノを前に、人は思わず記憶の底の声を語りだす。
モノに宿された記憶は、語りなおしを通して、命をつなぐ。
路傍の地蔵や道祖神の謂れのように。

亡き娘のぬいぐるみ、携帯電話の声、山の供養塔、寄り物と漁師の思想、
第五福竜丸事件、東京電力福島第一原発事故による汚染処理水の海洋投棄……

本書は、「復興」の物語からはみだす、小さな〈モノ語り〉の記録であり、
他者の記憶の継承という問いに対する、真摯な応答の記録である。
当事者/非当事者の境界を越えて、命の記憶を語りつぐために。
カラー32頁。志賀理江子の撮り下ろし新作未発表写真16頁を付す。

 

目次

Ⅰ 終わりと始まり

「被災物に応答せよ」「第三者による記憶の継承」という問い  姜信子

モノ語り集Ⅰ
祠/郵便受け/漁船/シュガーポット

記憶の器としての被災物  山内宏泰

Ⅱ 「モノ」語りは増殖する

「被災物」は記憶を解き放つ  記憶のケアとしての「モノ語り」  姜信子

モノ語り集Ⅱ
ぬいぐるみ/トランペット/電柱/足踏みミシン/ドラム缶/携帯電話
呼び鈴/トタン板/床板/児童文学全集/椅子/洗濯機/香炉/受話器

座談会1 これは、きっと、新しい神話の増殖が始まっているんだ
「被災物ワークショップ」参加者

Ⅲ 氾物語-躊躇なく触る
リアス・アーク美術館に眠るもの
案内する人 山内宏泰
写真 志賀理江子

土の時間、水の時間  東琢磨

Ⅳ 恵比寿の到来

ナニカが海からやってくる  姜信子

えべっさま、ようきてくれましたな  武地秀実

目覚めよ、ヒルコ  岡本マサヒロ

座談会2 気仙沼リアス・アーク美術館「被災物」の企み
山内明美×山内宏泰×ワークショップ参加者×姜信子

Ⅴ 新しい祭りへ

南三陸集会+気仙沼への旅 姜信子

エビスが語りて命をつなぐ 川島秀一

 

著者プロフィール

姜信子 (キョウノブコ) (著)
作家。1961年横浜生まれ。著者に、『棄郷ノート』、『声 千年先に届くほどに』、『現代説経集』、『はじまれ、ふたたび』、『語りと祈り』、『忘却の野に春を想う』(山内明美との共著)など多数。訳書に、李清俊『あなたたちの天国』、ホ・ヨンソン『海女たち』(共訳)、キム・ソヨン『数学者の朝』、『奥歯を噛みしめる』(監訳)、編書に『死ぬふりだけでやめとけや 谺雄二詩文集』などがある。

山内宏泰 (ヤマウチヒロヤス) (著/文)
リアス・アーク美術館館長。美術家。1971年宮城県石巻市生まれ。常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」を企画担当する。気仙沼市東日本大震災伝承検討会議委員、同遺構検討会議委員および遺構施設展示アドバイザー。気仙沼市復興祈念公園施設検討委員。2004年宮城県芸術選奨新人賞受賞(美術・彫刻)、2017年棚橋賞受賞(日本博物館協会)。

志賀理江子 (シガリエコ) (写真)
写真家。1980年愛知県生まれ。2007年、写真集『 Lilly』と『CANARY』で第33回木村伊兵衛写真賞を受賞。2008年より宮城県に移り住む。近年の展覧会に、「螺旋海岸」(せんだいメディアテーク)、「ブラインドデート」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)、「ヒューマン・スプリング」(東京都写真美術館)、「さばかれえぬ私へ」(東京都現代美術館、Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023受賞記念展)などがある。

川島秀一 (カワシマシュウイチ) (著/文)
1952年宮城県気仙沼市生まれ。東北大学教授を退職した2018年、福島県新地町に移り住み、漁師に弟子入りする。著書に、『ザシキワラシの見えるときー東北の神霊と語り』、『漁撈伝承』、『カツオ漁』、『津波のまちに生きて』、『海と生きる作法 漁師から学ぶ災害観』、『春を待つ海 福島の震災前後の漁業民俗』などがある。

山内明美 (ヤマウチアケミ) (著/文)
1976年宮城県南三陸町生まれ。宮城教育大学教育学部准教授。専門は歴史社会学、社会思想史。日本の東北地方と旧植民地地域をフィールドに、稲作とナショナリズムをテーマとする文化的政治を研究している。著書に『こども東北学』、共著に『「辺境」からはじまる 東京/東北論』、『ひとびとの精神史 第3巻 六〇年安保 1960年前後』、『忘却の野に春を想う』(姜信子との共著)などがある。

東琢磨 (ヒガシタクマ) (著/文)
評論家。1964年広島県生まれ。ヒロシマ平和映画祭実行委員、山形ドキュメンタリー映画祭審査員、大学講師などを歴任。著書に、『全─世界音楽論』、『違和感受装置』、『ラテン・ミュージックという「力」』、『広島独立論』、『ヒロシマ・ノワール』、『忘却の記憶 広島』(共著)『ホロコーストとヒロシマ』(共著)など多数。

被災物ワークショップ参加者 (著/文)
岡本マサヒロ、太田てじょん、大谷眞砂子、座主果林、社納葉子、武地秀実、畑章夫、伴戸千雅子、平井梨絵、深田純子、桝郷春美、渡部八太夫、滝沢厚子、横江邦彦、足立須香

 

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