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デヴィッド・グレーバー (著) 藤倉達郎 (翻訳)/以文社/A5判 上製/592ページ
『負債論』や『ブルシット・ジョブ』そして遺作となった『万物の黎明(The dawn of everything)』(D・ウェングロウとの共著)などの著作で、つねに世の「常識」とされるものの根幹にある思考パターンの転覆を試みてきたデヴィッド・グレーバーが、自身の博士論文の出版を後回しにしてまで取り組んだ「最初の主著」であり、袋小路に入り込んでいる社会理論がそこから抜け出すために仕掛けられた「価値の総合理論」。
さまざまな社会の価値体系を記述してきた人類学は、ポストモダン(思想)と新自由主義が席巻するなか、批判なき相対主義という罠に嵌っている。その人類学を救い出そうとするグレーバーの当初の目論見は思わぬ壮大な思考実験、つまり新たな価値理論の構築へと進む──
「意味の体系(この世界を理解したい)」と「欲望の理論(このような状況を実現したい)」を、そしてカール・マルクスとマルセル・モースを架橋する、のちに複数の怪物的な著作として結実したグレーバー思想の源流。
目次
序にかえて
第1章 価値を語る三つの方法
第2章 交換理論の現在の潮流
第3章 行為の重要性としての価値
第4章 行為と反影、あるいは富と力の理論へむけての覚書
第5章 ワンパムとイロコイの社会的創造力
第6章 マルセル・モース再訪
第7章 私たちの夢の偽硬貨、またはフェティッシュの問題 Ⅲb
訳者解説
文献
主要用語索引
主要人名索引
デヴィッド・グレーバー (デヴィッドグレーバー) (著/文)
1961年ニューヨーク生まれ。ニューヨーク州立大学パーチェス校卒業。シカゴ大学大学院人類学研究科博士課程(1984-1996)修了、PhD(人類学)。イェール大学助教授、ロンドン大学ゴールドスミス校講師を経て、2013年からロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授。2020年死去。
訳書に、『アナーキスト人類学のための断章』(2006 年)、『負債論──貨幣と暴力の5000 年』(2016 年)、『官僚制のユートピア』(2017年、共に以文社)、『ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論』(2020年、岩波書店)ほか。
日本語のみで出版されたインタビュー集として『資本主義後の世界のために──新しいアナーキズムの視座』(以文社、2009 年)がある。
著書に、Lost People: Magic and the Legacy of Slavery in Madagascar (Indiana University Press, 2007), Direct Action: An Ethnography (AK Press, 2007). ほか多数。
マーシャル・サーリンズとの共著に、On Kings (HAU, 2017, 以文社より刊行予定)、またグレーバーの遺作となったデヴィッド・ウェングロウの共著に、The Dawn of Everything(Farrar Straus & Giroux, 2021)がある。
藤倉 達郎 (フジクラ タツロウ) (翻訳)
1966年京都生まれ。アーモスト大学卒業。イェール大学法科大学院修士課程修了、LL.M。
シカゴ大学大学院人類学研究科博士課程(1992-2004)修了、PhD。現在、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授。専門は人類学と南アジア地域研究。特にネパール・ヒマーラヤ地域における社会運動や開発現象などについて調査をおこなっている。
著書に Discourses of Awareness: Development, Social Movements and the Practices of Freedom in Nepal (Martin Chautari, 2013)、 共著書に The Noodle Narratives: The Global Rise of an Industrial Food into the Twenty-First Century (University of California Press, 2013)、共編著にThe Dynamics of Conflict and Peace in Contemporary South Asia: The State, Democracy and Social Movements (Routledge, 2021)。
日本語論文に「暴力と忘却 : ネパール内戦下の生活と死者、強制失踪者」田中雅一他編『インドー剥き出しの世界』(春風社、2021)、訳書にアルジュン・アパドゥライ『グローバリゼーションと暴力』(世界思想社、2010)など。