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武田麟太郎 著/共和国/A5変型判/400ページ
高見順
「私に文学的開眼を与えてくれた人」
織田作之助
「血縁を感じている」「文壇でもっとも私に近しい人」
三島由紀夫
「武田麟太郎の作品を今読んで感心するのは、その文章の立派なことだ。目の詰んだ、しかも四方八方に目配りのきいた、ギュッと締って苦味のある、実に簡潔でしかも放胆ないい文章」
関東大震災からの復興をとげた、1930年代の東京。都心から周縁部へと蔓延してゆく不良住宅、工場街、そして貧困。戦争に突入する《非常時》にあって帝都の底辺をアクチュアルに描き出し、ファシズムと対峙した小説家、武田麟太郎の都市文学を集成する。
これはメガイベントで再開発が進む、日本の首都の未来図なのか?
◎発表時に削除され、これまで幻とされていた『文藝春秋』版「暴力」を初収録。
目次
兇器
暴力(初出『文藝春秋』版)
色彩
場末の童謡
浅草・余りに浅草的な
託児所風景
新宿裏旭町界隈
上野ステーション
隅田川附近
日本三文オペラ
蔓延する東京――食ふ物語/遊ぶ物語(単行本初収録) *写真=堀野正雄
一の酉
私の「大学生」
一時代の思出(単行本初収録)
東にはいつも何かある *挿画=木村荘八
大凶の籤
好きな場所
武田麟太郎(タケダ リンタロウ)
1904年、大阪市に生まれる。
第三高等学校卒業、東京帝国大学文学部退学。
同人誌『真昼』を経て、1929年、「兇器」でデビュー。
プロレタリア文学者として活躍するが、やがて「市井事もの」と呼ばれる作風に活路を見いだす。36年、雑誌『人民文庫』を創刊し、反ファシズム文化戦線の後退戦を担う。41年、報道班員としてジャワ島に従軍。敗戦直後の46年、藤沢市に没する。
主な小説集に、『暴力』『反逆の呂律』『釜ヶ崎』『銀座八丁』『下界の眺め』『市井事』『大凶の籤』『雪の話』など多数。エッセイ集に『好色の戒め』『世間ばなし』『市井談義』がある。