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ピーター・フレイズ(著) 酒井隆史(訳)/以文社/四六版 並製/272ページ
2010年代からはじまった「新世代」による世界的な知的・実践的ムーヴメントを牽引した『ジャコバン』誌の立ち上げメンバーであり編集委員のピーター・フレイズが放つ、「資本主義以後」の世界へ向けた四つの展望。
本書は『ジャコバン』誌とヴァーソ(Verso)社のコラボレーションによるもので、すでに7ヶ国語以上に翻訳されているが、実際にこれからの世界の「論点」をここまで手際よくまとめた本にはなかなかお目にかかれないはずである。
フレイズが描き出すのは四つの展望(ありうべき未来)、すなわち「コミュニズム」「レンティズム」「ソーシャリズム」「エクスターミニズム(絶滅主義)」である。この四つの未来は同時にあらわれうるし、いっぽうでいずれかの傾向を強くしていくこともあるだろう。(たとえば、日本でも近々サービスが開始されるという「ライドシェア(サービス)」は、ある種の「ソーシャリズム」的な側面を持ち合わせつつ「レンティズム」に傾くこともありうるし、また、現在イスラエル国家のやっていることは端的に「エクスターミニズム(絶滅主義)」である)。いずれにせよ、私たちが進む未来を決めるのは広い意味での「政治(的闘争)」であり、そこでは「階級(闘争)」という視点は欠かせない。
そして、この四つの未来に不可避にかかわっていくる「二つの妖怪」がいる。それは、従来の労働を不要にしていく「自動化」と、私たちの生活そのものの基盤を揺るがす「気候危機」である。この「二つの妖怪」と「四つの未来」の絡み合いによる──しかしこれはけっして未来予測ではない──フレイズの展望は、私たちの思考=行動に「未来への想像力」を添えてくれるはずである。
目次
序章「黙示録とユートピアとしてのテクノロジーとエコロジー」
第一章「コミュニズム──平等と豊かさ」
第二章「レンティズム──ヒエラルキーと豊かさ」
第三章「ソーシャリズ──平等と稀少性」
第四章「エクスターミニズム──ヒエラルキーと稀少性」
結論「いくつかの移行と展望」
付録「死の党の台頭」
訳者解説(酒井隆史)
ピーター・フレイズ(Peter Frase)
『ジャコバン』誌(https://jacobin.com)編集委員。アメリカ民主社会主義者同盟(The Democratic Socialists of America)ハドソンバレー支部副委員長。『ジャコバン』誌のほか、『イン・ディーズ・タイムズ』(In These Times)などさまざまな媒体で執筆。本書(Four Futures: Life After Capitalism, Verso, 2016)は、韓国語、スウェーデン語、ルーマニア語、ポーランド語、トルコ語、イタリア語に翻訳されている。
酒井隆史 (サカイ タカシ) (翻訳)
1965年生まれ.大阪府立大学教授.専門は社会思想,都市史。
著書に,『賢人と奴隷とバカ』(亜紀書房)、『ブルシット・ジョブの謎』(講談社現代新書)、『完全版 自由論』(河出文庫)、『暴力の哲学』(河出文庫)、『通天閣 新・日本資本主義発達史』(青土社)など。
訳書に、デヴィッド・グレーバー+デヴィッド・ウェングロウ『万物の黎明』(光文社)、デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』(共訳、岩波書店)、『官僚制のユートピア』(以文社)、『負債論』(共訳,以文社)、ピエール・クラストル『国家をもたぬよう社会は努めてきた』(洛北出版)など。