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奥野克 近藤祉秋 ナターシャ・ファイン 編/以文社 /A5判 並製/320ページ
地球規模での環境変動、資本主義の見えない未来、科学技術の革新が問いかける人間性の変容ーー「人新世」時代の今日、人類を含めた多種の絡まり合いの現実を看過することはできない。
多種間の関係を記述してきたマルチスピーシーズ民族誌と、人間と人間を取り巻く環境との関係に注視してきた環境人文学が交差する「人間以上」の人文知は、いかに可能か?
21世紀の人文諸学の未来を展望する、国内外の精鋭たちによる9つのインタビュー集。
「人間による地球の環境変動が取り沙汰されるようになった今日、人間という単一種から離れて、微生物から昆虫、動植物だけでなく地球外生命にも目を向け、多種の共同体を取り上げてその中に人間を位置づけ直してみることを、民族誌という人類学の強みに拠りながら探っていくのがマルチスピーシーズ民族誌であった。その試みは、人類学という既存の学問の枠だけにもはや収まるものではなくなっている。他方。環境人文学は人間と人間が住まう環境や自然、生物やモノとの関係性を、今日の複雑な政治・経済・社会および科学技術をめぐる文脈の中に位置づけて、既存の人文諸学が取り組むべきテーマを明確に示しつつ、諸課題に実質的にあたるための手がかりを与えてくれるだろう」(本書、序論より)
目次
序論 モア・ザン・ヒューマン 人新世の時代におけるマルチスピーシーズ民族誌と環境人文学(奥野克巳)
第一部 人間と動物、一から多への視点
第一章 インド中部ヒマラヤの種を超えた関係性(ラディカ・ゴヴィンドラジャン/宮本万里)
第二章 工業型畜産における人間-動物の労働(アレックス・ブランシェット/吉田真理子)
第三章 人間-動物関係をサルの視点から見る(ジョン・ナイト/合原織部)
総論Ⅰ(奥野克巳/近藤祉秋/大石友子/中江太一)
第二部 人間的なるものを超えた人類学の未来
第四章 モンゴルの医療、マルチスピーシーズ・ストーリーテリング、マルチモーダル人類学(ナターシャ・ファイン/村津蘭)
第五章 森の思考を聞き取る人類学(エドゥアルド・コーン/近藤宏)
第六章 想像力を駆使し、可能性の彼方に人類学を連れ出そう(アナンド・パンディアン/山田祥子)
総論Ⅱ(奥野克巳/近藤祉秋/大石友子/中江太一)
第三部 モア・ザン・ヒューマンの人類学から文学、哲学へ
第七章 外臓と共異体の人類学(石倉敏明/唐澤太輔)
第八章 エコクリティシズムのアクチュアリティ(結城正美/江川あゆみ)
第九章 仏教哲学の真源を再構築する(清水高志/師茂樹)
総論Ⅲ(奥野克巳/近藤祉秋/大石友子/中江太一)
あとがき マルチスピーシーズ人類学から本書を眺望する(ナターシャ・ファイン)
奥野克巳 (オクノ カツミ)
立教大学異文化コミュニケーション学部教授。北・中米から東南・南・西・北アジア、メラネシア、ヨーロッパを旅し、東南アジア・ボルネオ島焼畑稲作民カリスと狩猟民プナンのフィールドワークを実施。主な著書に『モノも石も死者も生きている世界の民から人類学者が教わったこと』(亜紀書房、2020年)、『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(亜紀書房、2018年)。『Lexicon 現代人類学』(以文社、共編著、2018年)、主な訳書にティム・インゴルド『人類学とは何か』(共訳、亜紀書房、2020年)などがある。
近藤祉秋 (コンドウ シアキ)
神戸大学大学院国際文化学研究科文化相関専攻講師。専門は文化人類学、アラスカ先住民研究。北海道大学アイヌ・先住民研究センター助教を経て現職。主な論文に「内陸アラスカ先住民の世界と「刹那的な絡まりあい」:人新世における自然=文化批評としてのマルチスピーシーズ民族誌」(『文化人類学』86巻1号、2021年)などがある。主な共編著に『犬からみた人類史』(大石高典・池田光穂と共編著、勉誠出版、2019年)、『人と動物の人類学』(奥野克巳・山口未花子との共編著、春風社、2012年)がある。
ナターシャ・ファイン
専門はマルチスピーシーズ人類学、映像人類学。オーストラリア国立大学・モンゴル研究所を拠点に活動。モンゴルやオーストラリアで、家畜化、マルチスピーシーズ民族誌、人間以上の領域の社会性などをテーマとしてフィールドワークを行ってきた。主な著作にLiving with Herds: Human-Animal Co-existence in Mongolia(2011)、主な映像作品にTwo Seasons: Multispecies Medicine in Mongolia(2017)などがある。