その猫の名前は長い

4705

その猫の名前は長い  (4705)

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イ・ジュへ著 牧野美加 訳/里山社/四六判/288ページ

 

「何がしきりにわたしたちを臆病者にさせるのだろう。わたしたちを絶えず孤立させ、ああはなりたくないと人に思わせ、軽蔑されやすい顔に変貌させ、何かを証明しなければと常にみずからを追い立てる。この病の名は何だろう。」(本文より)

 

子育てと家事の合間を縫って育んだ中年女性の友情に入る亀裂を描く「今日やること」、妻の外見を愛し内面を見ない夫の視点で描く「夏風邪」、女の惨めな学生時代を美化して記憶し同級生の男が映画を撮る「水の中を歩く」、冴えない女性社員が先輩社員に抱く淡い恋心を描く「その猫の名前は長い」など、生活のリアリティが滲み出る繊細な物語9作品。
主婦をしながら英米文学の翻訳家となり、アドリエンヌ・リッチやエリザベス・ビショップらに影響を受け小説を書いた著者の初邦訳。牧野美加の美しい翻訳文、大阿久佳乃による英米文学作品と本書の関わりを解き明かす大充実の解説(20P)付。

 

目次

「今日やること」
「誰もいない家」
「夏風邪」
「わたしたちが坡州に行くといつも天気が悪い」
「その猫の名前は長い」
「水の中を歩く人たち」
「花を描いておくれ」
「春のワルツ」
「その時計は夜のあいだに一度ウインクする」

作家のことば
訳者あとがき
解説「わたしたち」になることに関する覚え書き(大阿久佳乃)

 

イ・ジュへ(著/文)
読み、書き、訳す。2016年、チャンビ新人小説賞を受賞し、作家としての活動を始めた。著書に『すもも』『涙を植えたことのあるあなたへ』『ヌの場所』『季節は短く、記憶は永遠に』〈いずれも未邦訳〉、訳書に『わたしの本当の子どもたち』〈原題:My Real Children〉、『われわれ死せる者たちが目覚めるとき』〈原題:Essential Essays: Culture, Politics, and the Art of Poetry〉などがある。

牧野美加 (マキノ ミカ) (翻訳)
968年大阪生まれ。釜慶大学言語教育院で韓国語を学ぶ。第一回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」最優秀賞受賞。訳書にキム・ウォニョン『希望ではなく欲望―閉じ込められていた世界を飛び出す』(クオン)、キム・チョヨプ、キム・ウォニョン『サイボーグになる―テクノロジーと障害、わたしたちの不完全さについて』(岩波書店)、ジェヨン『書籍修繕という仕事:刻まれた記憶、思い出、物語の守り手として生きる』(原書房)、ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社)など。

大阿久 佳乃 (オオアク ヨシノ) (解説)
2000年三重県生まれ。文筆家。同志社大学神学部在学中。2017年より詩に関するフリーペーパー『詩ぃちゃん』を発行しはじめる。著書に『のどがかわいた』(岬書店、2020年)、『パンの耳1 ~10(ZINE)』(自費出版、2021年)『じたばたするもの』(サウダージ・ブックス、2023年)。著作の中心的テーマは、文学とともに生きる/生活すること。現在の文学的関心は、アメリカ・クィア詩。

 

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