「一人」のうらに―尾崎放哉の島へ

2942

「一人」のうらに―尾崎放哉の島へ  (2942)

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¥2,160
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西川勝 著/サウダージ・ブックス
/四六判ソフトカバー/232頁

 

◉ 本書の紹介

「一人」で生きるとはどういうことか。これほどその本質に迫った本はない

―宗教人類学者・植島啓司氏絶賛!

「「咳をしても一人」の句から始まった放哉の島への旅は、「一人」にしがみついているぼく自身からの旅でもあった。小豆島で放哉を想いつつ、自分をふり返る。「一人」ということばをつぶやくと、とたんに「一人」のうらから別の声が聞こえてくる。」

—本書より

気鋭の臨床哲学者が、絶望の日々に救いを求めた放浪の俳人・尾崎放哉の「孤独」に応答し、生と死を深く見つめる思索の旅。小豆島出身の心理学者・浜田寿美男との対談を収録。

 

▶表紙カバーは 【リバーシブルタイプ】。カバーの裏面にも、画家・絵本作家として活躍する nakaban作のオリジナル作品がカラー印刷されています。

 

序文

プロローグ 蚊と放哉

尾崎放哉について語ろうとすると、いつも、ぼくは自分をもてあます。放哉は自由律俳句という表現で、彼自身がもてあます自分を嚙み切ろうとした。ことばを削ぎ落とす放哉の句は、彼の人生と重なっている。

そして、ふと思い浮かぶ放哉の句が、ぼく自身の人生の思い出にも重なっている。最初の結婚に破れて、妻子と別れた二〇代の半ばのことである。いたく心傷つき、なかば自棄になっていながら、精神病院の閉鎖病棟で看護を仕事にしていた。ぼくの放蕩が故に、年老いた祖父や両親を経済的な困窮に巻き込み、挙げ句の果て、ぼくは両親が苦労して買った家を売り払ってしまう。住むところのなくなったぼくたちは、両親の知り合いであった旧家の大きな屋敷の離れに、数年のあいだお世話になった。ぼくが住んだ離れは、竹藪に隠れるようにしてあった。元々は馬小屋のあったところで、大正時代に隠居所として建て替えたという。もう一〇年以上、誰も使っていなかった。腐りかけの畳にはビニールの茣蓙を敷いた。天井が低く、つま先立って両手を伸ばせば届くほどだった。広さだけは十分にあり、侘びしさを増した。どうしたところで払い切れない借金と、将来に何の希望も見つけられない苦悶の日々を、ぼくは放哉の句と共に生きのびた。……

 

目次

プロローグ 蚊と放哉

「一人」のうらに 尾崎放哉の島へ

風の中の声

小豆島と放哉 浜田寿美男との対話

エピローグ 放哉の笑い

資料 尾崎放哉年譜

 

著者紹介

西川 勝(にしかわ・まさる)
一九五七年、大阪生まれ。専門は、看護と臨床哲学。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任教授。高校卒業後、精神科・透析治療・老人介護の現場で看護士や介護士として働く。一方で関西大学の二部で哲学を学び、後に大阪大学大学院文学研究科博士前期課程修了。現在は「認知症コミュニケーション」の研究を行いつつ、哲学カフェやダンスワークショップなどの活動にも取り組む。著書に『ためらいの看護』(岩波書店)、『となりの認知症』(ぷねうま舎)など。

 

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