ダダ・カンスケという詩人がいた 評伝陀田勘助

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ダダ・カンスケという詩人がいた 評伝陀田勘助  (4356)

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吉田 美和子著/共和国/菊変型判 並製/378ページ

 

「ダダ」を自分の名とした唯一のアナーキスト詩人、陀田勘助(1902-1931)。アヴァンギャルドの担い手として鮮烈にデビューしながら、やがてその筆名と詩を捨てて、本名の山本忠平として共産主義者に転向。非合法共産党の中央委員候補として検挙されると、謎の獄死を遂げる。享年29。
細井和喜蔵、岡本潤、萩原恭次郎らとの交流から、当局による自殺との発表に対して、いまなお小林多喜二に先立つ虐殺説が根強いその死にいたるまで、謎に包まれた詩人の影を追いかけた初の伝記。定価3700円+悪税。

 

目次

島に居る岡本潤と俺の肖像

第1章 「同志山忠」とは誰か
発端―1枚の絵
「モダン東京―一九三〇年代の夢」
栃木―蔵の町の少年
本所―忠平は隅田川を渡る
荒井町の洋服屋
大手町―内務省の給仕

第2章  陀田勘助の出発と雑誌『種蒔く人』
開成中学自主退学事件
「啄木会」―渋民歌碑建立募金文芸講演会
1921年第2回メーデー
忠平、村松正俊と出会う
『種蒔く人』創刊
幻の二人詩誌『ELEUTHERIA』とペンネーム・ダダのこと

第3章 詩誌『鎖』創刊
『鎖』をめぐるさまざま
『鎖』創刊号―1923年6月
『鎖』第2号へ―1923年7月
『女工哀史』細井和喜蔵の登場

第4章 関東大震災──亀戸事件と陀田勘助
印半纏で走るカンスケ
亀戸事件とは何か
南葛労働協会には「支部」もあった―佐藤欣治のこと
亀戸警察署長、戒厳司令官はこう語った

第5章 震災後を生きる
『鎖』第3号からの再出発
「日本無産派詩人連盟展」と詩誌『無産詩人』
松本淳三の詩誌『詩を生む人』への寄稿

第6章 岡本潤と陀田勘助──『マヴォ』における呼応
『赤と黒』と『鎖』
小野十三郎の勘助評
『マヴォ』に呼応する岡本潤と陀田勘助
細井和喜蔵の死、渋谷定輔のこと

第7章  ギロチン社事件と『黒旗』──アナキスト山本勘助の模索
江東に自由労働者の組合を
労働運動社、大杉栄、岩佐作太郎
ギロチン社のテロリストたち
黒旗社結成と『黒旗』創刊―1925年11月
黒旗社パンフレット
ギロチン社事件の余波―『文芸戦線』再見

第8章 復興局の土木人夫──『反政党運動』時代
「黒色青年連盟」結成と銀座デモ
黒旗社時代を回想する―松田解子、菊岡久利
復興局の土木人夫
「反政党運動」―純正アナキズムとアナルコ・サンジカリズム
汎太平洋労働組合会議問題と全国自連の分裂  自協派・江西一三の回想

第9章 アナ・ボルのわかれ──詩人たちの訣別
『文芸戦線』の分裂
『文芸解放』創刊―文芸講演会に勘助飛び入る
隅田川のわかれ
暴力のわかれ―壺井繁治の場合

第10章 プロレタリア美術展覧会と《同志山忠の思い出》
東京合同労組へ、入党へ
トーマは帰れ―東京駅の騒擾
望月晴朗画《同志山忠の思い出》が描いたもの
ビラは天に向かって撒く―武田麟太郎のこと
望月晴朗という画家
プロレタリア美術とは何だったか

第11章 検挙のあとさき
組織者忠平の「作風」
忠平検挙へ―田中清玄「再建ビューロー」を巡って
松永伍一の「陰謀説」
なお残る不明点―南喜一と「解党派」問題
忠平以後―武装メーデーと「全協刷新同盟」

第12章 獄窓の春、その死
獄中詩編
死の周辺
田中清玄の証言
予審という闇
『戦旗』の在監者名簿―忠平の不在
戦後―「山本勘助追悼とぶらつく詩の会」

参考文献

あとがき

別丁カラー図版:《同志山忠の思い出》(望月晴朗・画)

 

吉田美和子(ヨシダミワコ)
1945年、岩手県生まれ。東北大学文学部国文科卒業。著書に、『単独者のあくび―尾形亀之助』(木犀社、2010)、『うらやまし猫の恋―越人と芭蕉』(木犀社、2008)、『吉田一穂の世界』(小沢書店、1998)、『宮沢賢治―天上のジョバンニ・地上のゴーシュ』 (小沢書店、1997、第十三回岩手日報文学賞賢治賞受賞)、『一茶無頼』(信濃毎日新聞社、1996)など。

 

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