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引込線/放射線/EOS ART BOOKS/A4判/160ページ カラー
未来派のマリネッティの活動がファシズムへ展開した論理とはどのようなものだったのか? ロシア・アヴァンギャルドのリシツキーの活動がスターリニズムのプロパガンダへと発展していった過程とはどのようなものだったのか? 第一次世界大戦下、反戦から生まれたダダやマルセル・デュシャンの戦略とその可能性とは? ファシズムとスターリニズムが渦巻く状況下から出発したクレメント・グリーンバーグは、どのように戦後美術の理論を形成していったのか? 両世界大戦期に結びつく、群衆、大量生産、資本主義、債券、スペイン風邪、原子力とは何だったのか? 民主主義と資本主義が抱える課題が噴出した両世界大戦期の前衛芸術を検証し、現代の芸術と社会の関係を考えるために不可欠な基盤を提示する。
20世紀前半の前衛芸術を当時の政治・社会状況との関わりから読み直す8本の論考に加え、今号のキーパーソンであるマリネッティとリシツキーのテクスト邦訳を掲載。さらに、図版と解説文で構成されるカタログでは、芸術作品だけでなくあらゆる事象を批評的考察の対象とした「架空の展覧会」を紙上で掲示する。「100兆パピエルマルク」「群衆」「スペイン風邪」「SFとしての20世紀」「カモフラージュ」「都市封鎖」などを「政治の展覧会」の出品作として展示・解説する。
目次
p.1 「政治の展覧会」について
p.2 はじめに|橋本聡
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p.6 catalogue1 世界大戦(未来派の詩)
p.7 catalogue2 世界大戦(戦争の展覧会)
p.8 序論『政治の展覧会:世界大戦と前衛芸術』|松井勝正
p.15 catalogue3 都市封鎖――地球最大の展覧会
p.16 catalogue4 20世紀――SFとしての20世紀(H・G・ウェルズと原子力)
p.18 catalogue5 戦争の顔
p.20 critique1 未来派文学技術宣言+未来派文学技術宣言補遺|F・T・マリネッティ、池野絢子訳
p.32 catalogue6 群衆
p.34 critique2 詩と戦争――マリネッティの美学|松井勝正
p.46 catalogue7 ムッソリーニ――政治家にして芸術家
p.48 critique3 前衛・政治・身体――未来派とイタリア・ファシズムのスポーツ戦略|中島水緒
p.64 catalogue8 大量生産(mass production)
p.66 catalogue9 制作された事実
p.68 critique4 生産における芸術家|エル・リシツキー、関貴尚訳
p.72 critique5 すべてが組織化されるとき――エル・リシツキー「生産における芸術家」の余白に|関貴尚
p.84 catalogue10 「プレッサ展」図録
p.85 catalogue11 人民の代表――リプレゼンテーションとアブストラクション
p.86 critique6 運動-刷新の芸術実践――エル・リシツキーとスターリニズム|勝俣涼
p.96 catalogue12 無差別爆撃
p.96 catalogue13 飛行の不安定なパースペクティヴ
p.98 catalogue14 破壊されたドレスデン
p.100 catalogue15 カモフラージュ
p.102 critique7 戦争か、ゲームか――9つのフラグメンテーション、あるいはコーパス|中尾拓哉
p.116 catalogue16 100兆パピエルマルク
p.118 critique8 レディメイド――世界大戦へのアンチテーゼ(反転)|橋本聡
p.136 catalogue17 ウイルス
p.138 catalogue18 スペイン風邪
p.140 critique9 形象が歪む――アヴァンギャルドとキッチュ|沢山遼
p.154 catalogue19 ブラックホール――未来のアーカイヴ
p.156 gift 1000ソヴィエトルーブル
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p.158 編集後記|中島水緒
p.159 〈引込線/放射線〉開催概要(本書の制作に関して)
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pp.0-160 失史年表 Nothing Timeline
刊行日 2020年8月15日
企画・制作 引込線/放射線パブリケーションズ
主催 引込線2019実行委員会
編集長 松井勝正
副編集長 中島水緒
デザイン 橋本聡