Sa+ #004 声と芸術生産

3070

Sa+ #004 声と芸術生産  (3070)

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+journal/D4版タブロイド(406×272mm)/24ページ

 

現在、世界中で6000万を超えようとする数の人々が、戦争による迫害や貧困から逃れるため、行き着く先も分からぬままに自国を離れることを余儀なくされている。人間であることの尊厳を奪われ、助けの手を差し伸べられないままに命を落とした人々の数は正確に知ることさえ不可能だろう。欧米諸国の介入主義にも大きく依拠する対立が引き起こした第二次世界大戦後最大の難民危機は、民主主義の限界をつきつけ、平和の意味を、そしてヒューマニティとは何かを同じ時代を生きる私たちに問いかけている。一方、日本は昨年、武力を行使する方向へと大きく舵を切った。長期に渡る経済的停滞の只中で起きた東日本大震災と福島原発事故によって社会が—「安定」を失った人々の心が—揺さぶられ続ける中で、「平和」の意味が性急に書き換えられつつある。そして、現在の戦争や武力介入がもたらしている惨状を目の当たりにしながら不戦の意義を棄てようとする政府に対して、多くの人々が賛否の声を上げ、日本という国家のあるべき姿を主張している。たった5年前ですら、誰も考えられなかったような大規模なデモ、「国を脅かす」者たちへのヘイトスピーチ、インターネットの匿名性を盾に、暴力を自制しない言葉の応酬。

しかし、こうして私たちに聞こえてくる声の多くは、複雑に絡み合う事象を単純化したロジックによって二極化されてもいる。そのような声は時に激しい情動を引き起こし、それを発する人々と向けられた人々の双方に、さまざまなかたちで染みこんでゆく。耳をふさいでも聞こえてくる声の力から影響されずにいることは難しい。強い声に同調することには自己を委ねる心地よさがある。一方で、周りの声に抗い、自らの声を伝えることを諦めないでいるには信念を必要とする。ノイズにかき消される小さな声や沈黙に耳をすまし続けることには、他者への配慮と共に内省を要する。

私たちはどのように声を発していて、他者の声を聞いているのか。自らの声をぶつけることも、自分の声を押し殺すこともなく、いかにして他者と言葉を交わすことができるのか。これらの問いを軸に、今の社会を生きる私たちのふるまいを、そして今の時代に対峙する芸術の実践とその可能性を考察するプラットフォームとして今号を発刊する。

+journal チェ・キョンファ

 

CONTENTS

石川竜一(写真家) 「CAMP」
内田聖良(余白工事の会(余白工事人)・ 凡人ユニット) 「オススメの島、野蛮なおばけたち」
榮山剛士(写真家) 「Listening to the beach」
大谷芳久(かんらん舎 画廊主) 「絶望すればいいんですよ・・・」
奥村雄樹(アーティスト/トランスレーター) 「声と体を分け与える / 声と体を貸し与える」
狩野 愛(アートアクティヴィズム研究) 「声を上げるか上げないか」
木原 進(urizen / Post Studium運営) 「シジフォスの石 完成させない建築《サグラダ・ファミリア》」
倉茂なつ子(芸術表象) 「research room 14th Istanbul Biennial, 2015」
小林晴夫(blanClass主宰) 「共鳴する装置の発明」
菅谷奈緒(アーティスト) 「排除に抗すること、境界に立つこと、なにも持たないこと。」
杉田 敦(美術批評) 「フェルディナン、酷い人ね……」
高山 明(Port B主宰・演出家) 「『国民投票プロジェクト』 — 声を集める演劇アーキテクチャ」
照屋勇賢(アーティスト) 「A Capital – No Capital」
Barbara Darling(アーティスト) 「“Ils paient, toute leur vie, assez cher d’être le peuple, pour avoir ces petites distractions-là.” Jean Anouilh (1953). L’ alouette. Paris,Éditions de la Table ronde.」
深田晃司(映画監督) 「映画とプロパガンダ」
本間メイ(映像研究) 「ファクト/表現/リアリティもしくは虚偽・主張/反覆」
町田ひろみ(アーティスト) 「したくない戦争」
Maharani Mancanagara(アーティスト) 「Rekaan Propaganda 架空のプロパガンダ」
森村泰昌(美術家) 「なにものかへのレクイエム(ASANUMA 1 1960.10.12 – 2006.4.2)」
野生派(石川竜一+木村絵理子+ミヤギフトシ+吉濱 翔) 「夜明けの不協和音」
湯浅千紘(アーティスト) 「でもいかない」
吉濱 翔(アーティスト) 「小さな証拠」

 

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