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きら/13番館/B6判/344ページ
失業手当をもらい切り、一年で3つもバイトを変えて、生き延びるために勉強を始めるもこれで良いのかと悩みながら生活を送る。デモ、カウンセリング、パレスチナ、たまに制作、石拾い。拠り所を探す日々の日記。(版元サイトより)
以下、日記(部分)抜粋です。
2023年12月9日(土)
家まで帰る前に、木材屋さんの目の前にある移動式のたい焼き屋さんで餅入りの鯛焼きを買ってその場にヤンキーみたいに座り込んで食べた。友達はあんこをこぼしていた。食べ終わって家まで歩いて向かう途中、友達が「生きてるね!」と言い、思わず笑ってしまった。私たちの場合は制作することが生きているということなんだと思う。
2024年3月4日(月)
歩いて長良川に向かう。道中お土産屋さんが目に入り、入ってういろうを買った。それから河原に降りて石拾いをした。見たことのない茶色い縞々の模様が入った石が落ちていて、数個拾い集めた。まん丸な石やいろんな色の粒々が入った石など、たくさん拾った。友達も夢中になって拾い集めていた。ういろうと石でリュックがずっしり重くなった。
4月4日(木)
家に帰って『宮沢賢治農民芸術概論綱要』を読む。序論の中にある「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という一節に目が止まる。今一番の願いはパレスチナ解放だ。イスラエルによるパレスチナへのジェノサイドが始まって半年経った。
5月29日(水)
公園でお弁当を食べる。ベンチが埋まっているので砂場のヘリみたいなところに座る。タッパーのお弁当を公園のベンチ未満の場所で黙々と食べるすっぴんメガネの28歳フリーターである。こんな28歳になるとは。あまりにもぱっとしない日々だけど生き延びてるだけで十分えらい。
8月2日(金)
「from the river to the sea, Palestine will be free!」デモで覚えた言葉から、RIVERとSEAの文字が入ったビーズブレスレットを作った。今日で10月7日から300日経った。300日も虐殺が続いている。言葉にしてみても意味がわからない。一昨日くらいに首のない我が子を抱える父親の動画を見たことも、日記には書けていない。慣れてしまうのが恐ろしい。こんな世界に慣れてしまってはいけない。
9月2日(月)
kemioのポッドキャストの最新回のタイトルが〈#32 この夏の総括と「友達とパートナー」の話〉で、気になって聴いてみた。大事な友達から彼氏ができたことを伝えられたが、人とは違う悲しい気持ちになり、大切な人の幸せを一緒に喜べない自分の憎さに嫌気がさした、という旨のリスナーからの便りに対し、kemioは「わかる」と言いながらも、親友であるマイルズにそういうことが起きることを少し期待していると言っていた。kemioとマイルズは二人ともこれまでに恋人がいたことがないらしい。kemioの、そういうことをさらっと言えるところがかっこいいと思う。あと、友達にパートナーができたら、今まで自分に話してくれていたこともきっとパートナーに話すようになるけどしょうがないよね、という風なことも言っていた。
「もし私とほにに各々パートナーができたとしたら、パートナーに自分らのことを話して、ここではパートナーのことを話すかもしれんね。」と一緒に聴いていたほにに言ってみたら、「話題の交換留学や〜!」と急に彦摩呂調で返ってきたので「ひ〜!」と笑ってしまった。そんな感じだったら楽しそう。ありうるかもしれない未来。