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本作『Drapetomania(ドラペトマニア)』は、2010年以来共に活動して来たバルセロナのベテランプロデューサー、グレイ・フィラスティンと、インドネシアのネオ・ソウル・ボーカリスト、ノヴァ・ルスが、初めてデュオ名義でリリースするアルバムとなる。エレクトロニック・ミュージックとアコースティックを混在させ、ポップさと野性的な実験性を併せ持ち、ルーツ・ミュージックからフューチャー・ベースまでをも取り込むこのアルバムは、音楽によってゼノフォビア(外国人/異文化嫌悪)を撃ち破り、国境を越えた多面的な世界を提唱する作品となっている。
インド洋の木造帆船やサハラの埃っぽい村から、ブルックリンやバルセロナのバリオまで、その場その場の即席の音楽スタジオでこのアルバムは制作された。エレクトロニック・ミュージックに欠かせないTR-808とアナログシンセは、熱帯の湿気によってショートし、砂嵐で擦り傷を負い、十数都市の不協和音が染み込んでいる。ノマド的な二人の行き先は自由に決定できるものではなく、どの国が二人それぞれの国籍を受け入れ、どのくらいの間滞在することができるかということに左右される。このような国境との闘いは、アルバムの歌詞、さらにはその制作過程にも反映されている。「Perbatasan」は、フランスのカレーの難民キャンプ(通称カレー・ジャングル)でライブをした経験からインスピレーションを得て、元入国管理局の収容所の中でレコーディングされた。
フィラスティンが作り出すビートの構造は、フライング・ロータスの緩やかで有機的な「ズラし」に共通するところがあるが、フィラスティンの場合は、北アメリカよりも北アフリカに負うところが大きい。シンクロするドラムパターンとヘヴィーな低音は、アラビックな要素を加えたフットワークの曲「Blockchainz」、または「Cleaner」の暗くサイケデリックなトラップのパートのように、インストゥルメンタルの場面で前面に押し出される。もともとはゲスト・ボーカリストだったノヴァは、「Fenomena」「Senescene」「Miner」などでヴォーカルやソングライティングを担い、正式なパートナーとしてアルバム制作に関わった。また、フィラスティンとは初期から共演してきたブレント・アーノルドが、アルバム全体を通してみずみずしいチェロの音を提供している。
タイトルの『Drapetomania(ドラペトマニア)』は「逃亡奴隷精神病」のことである。奴隷が脱走しようとする衝動は精神の病によるものとされ、19世紀には大真面目に疾患として論じられ、鞭打ちが治療になるとさえ考えられていた。この「脱走への衝動」については、「Abandon(見捨てる・放棄する)」という4つのビデオクリップのシリーズでさらに探求され、音楽、映像、ダンスを用いた「Drapetomania」のライブ・パフォーマンスにおいては、人新世(アントロポセン)からの脱出口を召喚することが試みられる。
Track List:
- Miner 04:03
- Blockchainz 03:29
- Perbatasan 03:39
- Cleaner 03:33
- Fenomena 02:56
- Halcyon 04:04
- Senescene 04:11
- Salarymen 04:28
- Glass Seagulls 03:47
- Matamata 04:18
- Chatarreros 04:23
- Night X 02:38