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成相肇/かたばみ書房/A5判 並製/400ページ
転換期にはいつも、持たざる者の技術があらわれる――
雑誌、マンガ、広告、テレビなど1970年代前後の複製文化を読みとき、
機知と抵抗の技術として今に甦らせる。
〈わるさ〉が語る、もうひとつの戦後日本文化史。
パロディ裁判、岡本太郎への疑問、ディスカバー・ジャパン論争、
コピーと芸術家のもつれあい、マンガと美術のすれちがい、石子順造の思想、
赤瀬川原平と器用人、そして「食人」の教え……。
美術と雑種的な視覚文化を混交させる展覧会を企画してきた
異色の学芸員による、ゆかいな複製文化論。
アウトかセーフかの呪縛からの解放のために。
すべての持たざる者たちのために。
硬直化した思考をときほぐす、笑える批評の登場!
目次
不幸なる芸術
ファウルブックは存在しない(解題・不幸なる芸術)
Ⅰ コピー
コピーの何が怖いのか?
ゼログラフィック・ラヴ
ディスカバー、ディスカバー・ジャパン
すべては白昼夢のように――中平卓馬、エンツェンスベルガー、今野勉
植田正治にご用心――記念写真とは何か
Ⅱ パロディ
「パロディ、二重の声」のための口上
パロディ辞典(第二版)
未確認芸術形式パロディ――ことのあらましと私見
オリジナリティと反復の満腹――パロディの時代としての一九七〇年代前後左右
二重の声を聞け――いわゆるパロディ裁判から
パロディの定義、テクストの権利
Ⅲ キッチュ
「的世界」で考えたこと
石子順造小辞典
匿名の肉体にさわるには――石子順造的世界の手引き
石子順造的世界――脈打つ「ぶざまさ」を見据えて
石子順造と千円札裁判
「トリックス・アンド・ヴィジョン展――盗まれた眼」――一九六八年の交点と亀裂
Ⅳ 悪
口上 歌が生まれるとき(祈祷師たちのマテリアリズム)
「岡本」と「タロー」は手をつなぐか
俗悪の栄え――漫画と美術の微妙な関係
岡本太郎の《夜明け》と《森の掟》についての覚え書き
リキッド・キッドの超能力――篠原有司男(ギュウちゃん)の音声と修辞学
目が泳ぐ――いわさきちひろの絵で起こっていること
(有)赤瀬川原平概要
神農の教え
あとがき
成相 肇 (ナリアイ ハジメ)
東京国立近代美術館主任学芸員。美術批評家。1979年島根県生まれ。大学在学中に現代美術家に出会って雷に打たれ、19歳で初めて美術館を訪ねる。一橋大学大学院言語社会研究科修了。美術と雑種的な複製文化を混交させる企画を手がけながら、府中市美術館、東京ステーションギャラリー学芸員を経て2021年より現職。主な企画展に「石子順造的世界――美術発・マンガ経由・キッチュ行」(第24回倫雅美術奨励賞)、「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン――「遠く」へ行きたい」、「パロディ、二重の声――日本の一九七〇年代前後左右」、「大竹伸朗展」など。